ある夜の出来事 理由なき反抗

今晩は、店主の石原で御座います。

 

その夜、若者が、御来店、着席するなり、

 

「あのー、バーとか、あんまり来た事ないもんでぇ、なんか、お勧めでお願いします!」

 

(う‥ん。名古屋弁だなぁ‥‥。)

 

多少のコミュニケーションからパンペロ(ベネズエララム酒)をロックで勧めてみた。

 

煙草に火をつけて、一服した時に

 

「もしかして、名古屋出身ですか?」

 

「いえ、岐阜ですけど、何で、わかった?」

 

「そりぁわかるよ。俺が、名古屋だでよぅ。」

 

「イェーイ!」と、握手。

 

お互いの距離が、グッと、近くなった。

 

その名もジミー(仮)、六本木にある超人気イタリアレストランのシェフに惚れ込んで、岐阜から単身、上京してきた。

 

同世代から出遅れてるとの意識かあるらしく、朝十時から深夜零時まで、必死に働く。

 

そんな彼を支えるのが、この愛車のママチャリ、ハンドルを前に倒しての〝オニハン〟だ。

 

後輪には、常に、ビニガサが、ぶっ刺さっている。

 

「えっー!これで、表参道疾走してんの?」

 

「そぅっす!」

 

屈託の無い笑顔。私も休日を利用してジミーの働くイタリアンへ、店内は、常に満席。予約をしても、ずれ込む事もしばしば、ジミーは、既にイタリア語でスタッフとやり取りをしている。

 

(頑張ってるなぁ〜、、)どうだろう、二、三年こんな関係が続いた‥‥。

 

週に一度は、店に寄ってくれていたが、突然、来なくなった。

 

どうしたんだろう?多少の職場の愚痴は、聞いていたが、心配になる。

 

店にも行ってみるが、ジミーの姿はない。そんな事はよそに、満席の店内は、笑い声、食器の擦れる音、イタリア語が、飛び交っている‥‥。

 

やはり、料理は、最高に美味いが、何かが足りない。

 

レストランの帰り道、ジミーの携帯に電話をしてみた

 

「おかけになった電話番号は、電波の届かないところに居られるか、電源が、‥‥‥‥。」

 

 

あれから十年。。音沙汰なしだ‥‥。

 

まぁ、バーってところは、そんなもんだ、、。

 

寂しく思う事もあるが、行きたい時に呑みに行って、行かなくなるのも深い意味はない。

 

ふら〜っとジミーが、寄ってくれるのを待つだけの話だ。

 

先日も下北沢時代のお客様が二十年ぶりに御来店頂いた。

 

いよいよ、ひと昔が、十年単位になってきた。

 

さてさて、梅雨空の今夜もキャンドルに火を灯して、貴方様の御来店を待つばかり、、。

 

心よりお待ち申し上げております。f:id:bardragonfruit2002:20180607014147j:image