ある夜の出来事 ボーダーライン (前)

今晩は、店主の石原で御座います。その夜も最後のお客様をお見送りしての閉店。店内を明るくしてのBGMは、ラジオ深夜便に「バッツッ……」と、チューニングを合わす。グラスを洗いながら無意識のうち右から左へと昭和歌謡が、頭の中を通過する……帰宅準備も整う頃、カウンターに置いたスマホからマナモードの着信………、時計は、深夜二時過ぎを示している……こんな時間に誰だ???と、スマホの画面を覗き込む…。おっ?……何だろ?本日、御来店頂いたピートの妻、オレンジからだ、、、スマホをタップ

「あっ?もしもし……?」

「マスター?ねぇ…まだ、ピート居るの?」

「え〜!?いやぁ〜、とっくに、帰ったし、もぅ…かれこれ、四時間は、経ってるかな……」

「そっかぁ〜、いゃぁねぇ〜携帯に着信が、十六件入ってて…、寝てて気づかなかったの…」

「マジすかぁ………。」

「折り返しても、繋がらないし……。」

え〜〜?どうしたんだろう?ピート宅までは、当店から徒歩十分。明日も仕事だと、言いながらサクッと切り上げた印象だし、そこまで酔っていなかった…ひたすら、坂道を登るだけの簡単な道のり…。事件?事故?拉致?監禁?

「ごめーん…もう少し、電話して連絡取れなかったら警察に電話してみる……。」

「了解、了解。。」

電話を切っても、帰る気にもなれず…、ピートの自宅を知っている私は、代々木上原の住宅街を一人、散策する事にした…。時刻は、二時半を過ぎ、町は、シーーーーーンと、静まり返っている…。スマホを片手にチャリンコを押しながら、壁と壁の間、駐車場、車の下、庭先などなど、自分が、怪しまれない様にと神経を使う。どうだろう…、ピート邸まで、あと数百メートルのところで、マナーモードからのオレンジの着信。。(よーし、きたきた…)スマホをタップして、小声で対応

「……もしもし……。」

「マスター!?たった今、連絡とれた、、、。」

「大丈夫なん?……」

「うん……新宿のホテルだって………」

「えっ?ホテル?何で?」

おっと、と、と、と、と、残念ながら……、、、今夜は、閉店のお時間でございます。この続きは、次回という事で、、よろしいでしょうか?本日も御来店頂き、ま・こ・と・にありがとうございました!またの御来店、心よりお待ち申し上げております。

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