旅の計画は旅の始まり

その夜

Supremeのキャップを被った

男性二名様が

入口で迷いながら御来店頂く

カウンターが埋まっていたので

奥のボックス席にご案内させて頂いた。

メニューをご覧いただき

ラフロイグマッカランはどちらが飲みやすいですか。」

マッカランになりますね。」

マッカランハイボール

ワイルドターキーライのロックと

チョコレートのご注文頂いた。

聞こえる会話から

夏の旅行の打ち合わせを

兼ねたバータイムに思えた。

(中略)

そろそろ終電と

お会計の〆のサイン。

「ありがとうございます。」

お見送りながら、

「あのー…お店って変わりましたか。」

「いえ、変わってないです。」

「前回、来た時のマスターは短髪で

表には黒い看板があったかと。」

「はい、そーーです!」

現在、私の髪は

カイザーソゼなみに伸び、

(営業中はお団子にして接客させて頂いております。)

看板は

経年劣化より昨年度に撤去したのだった。

「よく覚えて頂きありがとうございます!」

現在、

ぱっと見でドラフルとわかるのは

扉の右上ある行灯のみ

遠方から当店を思い出して

御来店頂ける事は

この上ない

ありがたい気持ちであります。

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

good night…

BARは大人の社交場である

夜風が心地良い

ドラフルは今夜も

二穴解放のフルオープンエアー

18:20

カップルに御来店、

開口一番、

「おーー暇そうだなぁー!」

女性が

フォローするかのように

「まだ、早い時間だもんねぇー。」

二人は談笑しながら御着席する。

「御来店ありがとうございます。」

「もー…酔っ払っているからさぁ。」

と、男性は

今日は昼から飲んでると椅子にもたれる。

私は

メニューとおしぼりをお渡しするも

メニューは見ない。

ハイボールを二つ。」

「何か…お好みのウィスキーはありますか。」

男性は

バックバーを見渡しながら

「うーん、スタンダードでいいよ。」

スタンダードとは

お気軽なウィスキーを意味する。

「安いので。」

とか言わないのがバーならではの

合言葉(流儀)なのです。

男性は

バーによく行かれている様子で

オーセンティックバーにも詳しい。

オーセンティックバーとは

広くいえば…

ホテルにあるような

ゆったりとした椅子と

幅広のカウンターがあり

私の様に

下ネタ連発しない

カチッとしたバーを意味する。

店内を見渡し

「ここは、カジュアルバーだなぁ。」

私が

目指して務めるバーに認定してくれた。

ハイボールを飲み干し、

男性は

近頃はクールなバーが減ってきた。

これは

店側の問題だけでなくクールに飲む

お客さんも減ってきたと語る。

(中略)

「外で煙草吸っても大丈夫?」

「はい、灰皿ないすけど。」

ポケットからデュポンライターを取り出し

煙草を吸う後ろ姿は

まるで

昭和の銀幕のスターだ。

銀座、六本木、麻布と

バーに通い詰めた感が否めない。

グラスは

こののままでいいからと

二杯目の

ハイボールを召し上がりお会計のサイン。

これもまた…

〝バーに来たら一杯では帰らない〟

男性ならではの流儀がそこにある。

「ごっつぁんねぇ。」

江戸っ子感満載で

しっかりした足取りで退店、

御年八十歳だと教えてくれた。

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

おやすみなさい。

ヘミングウェイと夏の香りがした夜

陽が

落ちない十八時過ぎの

ドラフルは

二穴解放のフルオープンエアー

「こんばんは。」

昨年に

代々木上原から本郷に引越しした

シャルロットに御来店

本郷は老舗の佃煮屋や

朝から営業してる手作り惣菜屋などあり素敵な街だと語る。

代々木上原には

好きなカフェやパン屋もあるので

よく遊びに来るという。

シャルロットは

バーテンダーの経験があるので

お酒もカクテルも詳しい。

「こんな日は…

夏ぽいカクテルでアレアレ…。」

と頭を抱えるので

私は、

「カイピリーニャ!」

「違う!」

シーブリーズ!」

「違う!」

ダイキリ!」

ダイキリ!それ!」

私は

エッジの効いた

カクテルグラスを冷凍庫で冷やしてから

メキシコ産のライムを取り出し

ダイキリの準備に入る。

作りながら

シャルロットが連休に旅行してきた

富山の寿司屋談義に花が咲く

やはり、

地元のお客様が通う寿司屋は

いい寿司屋だと結論になった。

私は

ダイキリをサーブすると

気になる事が…

「差し支えなければ今日の香水は何でしょうか。」

「はい、フラワーマーケットです。」

「ふらわーまーけっと…ってお店の名前?」

「いえ、香水の名前です。」

(中略)

陽もすっかり落ち、

シャルロットはお会計のサイン

出口までお見送り、

買い物袋を持ち

以前のくせから

一瞬、

西原の住宅街に向かうも

「…違うわ。」

代々木上原駅方面に向かった。

フランスのオードトワレの

フラワーマーケット、

なんとも

華やかな香りが

初夏を

感じさせてくれた。

それでは

今夜もこの辺で

素敵な週末を…

おやすみなさい。

思い込みにもほどがあるの巻

その夜も

定刻通りに開店、

若いアジア系外国人男性が御来店頂く、

少し慌てた様子で

「@ywsr¥%☆♪÷×」

多分…

英語と思われるが

全くわからなかった。

私は

お隣さんと間違えていると思い。

「アオ、エオ、エロ、AO?」

ふってみるも反応がよろしくない。

「%☆¥♪→~+☆%♪@#*」

全くわからないので

私なりに歩み寄る

「ウェア?ゴーイング?」

男性は

更に焦っている様子で

リュックからスマホを取り出して

行きたい店を検索している。

待つ事数秒、、

見せられた

スマホの画面には

〝トイレを貸して下さい〟

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

good night…

零戦を語る夜

その夜

マルティナに御来店頂く

グレンモーレンジソーダ割りを召し上がりながら

G.W.の思い出話をしてくれた。

毎年、G.W.は里帰りするが

今年は

マルティナの引越があり、

両親が

東京に来てくれた。

「へぇー…どこ観光したの。」

靖国神社に行って来ました。」

「渋いねぇ…」

「母親が行きたいって言うから。」

私は

愛知県から上京して三十年を超えましたが

靖国神社には

一度しか行った事がない。

「なんか…普通の神社と雰囲気違うよね。」

「うん、零戦見てきました。」

零戦?」

「…靖国神社零戦なんてあったっけか。」

「はい。」

「どこに…」

「資料館?」

「そーーーーなんだ。」

(中略)

その夜も

マルティナと語り尽くして

お見送りしての閉店、

どーも、こーも

靖国神社零戦

気になった私は検索してみる。

「…あるわ。」

早速、

土砂降りの月曜日に靖国神社

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…日本人より海外の方の方が多かった。

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2024年

全世界で現存する零戦は二十機、

製造は約一万四百機。
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そのうちの八機が日本にあり

そのうちの一機が靖国神社遊就館にエントランスに鎮座する。
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2024年

全世界で飛行可能な零戦は五機あるが…

日本には存在しない。

遊就館(靖国神社本殿に向かって右側)

大人1000円

※館内は撮影、録画、録音、スケッチは禁止ですが

零戦コーナーのみ撮影可能。

とても…

一、二日で観るような内容では無かった。

遺品から軍服、手紙や写真、人間魚雷まで展示されてあり

白髪の女性が手押し車を押しながら

娘に空で説明しているのも印象的だった。

(オレも横で一緒に聞いてた。)

後半は

二十一歳で神風特攻隊となり

両親に宛てた手紙と遺髪がある…

涙なしでは

読むことが出来なかった。

2017年

日本で飛行可能な零戦は↑この一機だったが…

オーナーが維持費面で売却を検討し国内で買い手を探したが

折り合いがつかず

2018年

海外のコレクターに渡ってしまった。

初任給が出た夜に…

その夜

昨年まで

大学生だったガルシアが

今年の四月から新社会人に

スーツで御来店頂く、

初の給料日に飲みに来てくれた。

学生の頃よりも

グッと引き締まった表情になったガルシア

ラム酒のキャプテンモルガンをロックで

召し上がりながら

新社会人になって

感想を語ってくれた。

この一ヶ月、

新入社員研修中だが

業務の話は一切なく

マナーや礼儀作法を

徹底的に叩き込まれるという。

「たとえば?」

社内エレベーターでの立ち位置

(新人はボタンの前に率先して立つらしい。)

会席での上座、下座の場所

例外もあり、

景色の良いレストランであれば座席も変わるという。

「へぇ〜知らなんだ。」

その他にも

タクシーでの席

会食等では

上着を勝手に脱いではならない。

「なんで?」

先方が脱いだら自分も脱いで良いが

もし、

暑くて脱ぎたい場合は

断りを入れて脱ぐらしい。

「そーーなの。」

会食では

先方が箸を付けるまで

付けてはならない。

「オレが勉強なるわ。」

昨夜は

同期の人たちと鳥貴族で初の飲み会があった

人柄がわかりいい飲み会だったとうなずく。 

研修はまだまだ続き

昨今、

若者が苦手とする

電話の対応は

来週から始まるという。

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

おやすみなさい…。

アマルフィの風が吹いた夜

その夜は

土砂降りの土曜日となった。

開店して十分

海外からのお客様

カップル三組、計六名様に御来店、

カウンターで横並びに御着席。

聞こえる会話から

英語でないのはわかるが

何語かわからない。

ただ

一組のカップルは日本語がペラペラ、

「生ビール五つと…梅酒のソーダ割りをお願いします。」

(中略)

三十代前半かなぁ…

各々、隣人と会話を楽しむ。

会話の切れ目をみて女性が

「私たちは

全員イタリア人で、この二人が日本在住で

こっちの四人がイタリアから遊びに来ました。」

四名が微笑み

「コンバンワ!」

美男美女の六名…

吸い込まれそうな瞳と

美しいイタリアを想像される笑顔、

女性の

髪の美しさ、腕の長さ、指の長さ、

失礼の無いように見惚れてしまう。

男性は

彫り深く短髪で

筋肉質ながらも体脂肪も低めで頬骨もカッコイイー、

VOGUEかGraziaいやいやAmicaか…

ファッション雑誌から飛び出したかのようだ。

今宵は

イタリアから来た友人四名に

代々木上原の名店〝炭火串焼ふく〟に

招待する前の

ウェイディンバータイムだった。

日本在住のイタリア女性が

六本木、青山、広尾など美味しい店は沢山あるが

リーズナブルな

代々木上原が好きだと言ってくれた。

(オイラも聞いてみよー。)

「あのー…イタリアの方が美味しいイタリアンってありますか。」

「あります、あります!」

★IL BOCCALONE(恵比寿)

r.gnavi.co.jp

★LA BISBOCCA(恵比寿)

★brutto(代々木上原)

ちょっと日本風にアレンジしているけど美味しい。

brutto
〒151-0062 東京都渋谷区元代々木町4-4 田村ハウス1F
r.gnavi.co.jp

そろそろ

予約の時間だからとお会計のサイン、

近頃の海外のお客様は

カードも持っていない

スマホでタッチ決済なのだ。

「ピロン🎵」

「さんきゅー!」

ここでもまた驚く…

初来日のデュアリパ似のバックから

昭和の産物インスタントカメラ

写ルンです〟を取り出した。

「これどーしたんですか!」

「渋谷で買いました。」

カメラマンを託された私は

六名で記念撮影、ファインダーを覗くと

そこには

素敵過ぎるイタリーー!

「はい、チーーズ!」

〝パシャ!〟

「アリガトウゴザイマス!」

身支度をしてお見送りさせて頂く…

皆さん

私(177)より背が高かった。。

写ルンですの現像プリントはイタリアでも出来るそうだ。

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

Buona notte…