今晩は、店主の石原で御座います。
〝〝ゴート札とはかつて本物以上といわれたカリオストロ公国が製造する偽札の最高峰の事である〟〟
その夜、深夜から降り出した雨が時間を追うごとに強くなってきた…歩いて帰るかぁ‥‥と思いつつもタクシーが来たら乗ろう。車が水たまりを切る音が聞こえる度振り返ります。程なくして空車のタクシーが後方から〝バシャバシャ〟音を立てながら迫って来ます。
迷わず傘を持つ手を上げて乗車のサイン、停車したタクシーに乗り込むと既に靴下まで濡れている。自宅を伝えてタオルで濡れた手足を拭いていると‥
「お客さん、これから警察に行くところだったんですよ‥」
「え!何で?何で?」
ほらと、ドライバーは前を向いたまま左手を後ろに回し私に一万円札を渡します。
「なに?」
「…これねぇ〜偽札なんですよ‥前に乗せたお客‥‥」
「えっ〜!」
手元に一万円札がないので比較が出来なかったが言われなければ一瞬の判断は難しい、確かに透かしが・な・い。
もう少しドライバーさんとお話したかったが自宅に到着した。
雨は更に強くなり傘は意味なしですが降車後タクシーが見えなくなるまで見送った。
雨の深夜に九千円も騙し盗られながらも笑顔で、
「やられましたよ〜」
安全に送ってくれたタクシードライバーさんまたお会いしたいですね。