ある夜の出来事 3.11 (後)

今晩は、店主の石原で御座います。前回からの続きになります。近隣のビルの中に居た人々が、慌てて外に出てきたのか…薄着で両腕をさすってる。自転車で、店に向かうも小田原急線の「代々木八幡駅」は、ホームに人が溢れ、全線運行停止のアナウンスをしている。踏み切りを渡り更に、不安な気持ちを背負って店に向かう。

「おっーーーTさん!」すれ違いに安否確認。

「しかし…マスター……揺れたよねぇー」

「ええ、ご無事で?」

「店、開けるの?」

「うーん…行ってみないと…わかんない………」

店に到着するも外観からは、異常ナシ、、、裏口に回り店内の照明を点ける。

「おーーー?!マジかぁー………無傷だ……すごい……」

バックバーもグラスもそのまま、酒類が、ニ本落ちていたが、ゴミ箱がクッションとなり無傷、当店における被害額はゼロであった。開店準備も整い看板を点灯させるも余震があり落ち着かない……。BGMは、ラジオにして、最新の情報を収集、、。さてさて、金曜日の夜…お客様は、御来店頂けるのか?……しばらくして、先程、すれ違った、Tさんが奥様と御来店、電車が動いていないので帰れないと……焼き鳥屋〝福〟の後、二軒目に御来店 、どこの店も満席らしい、、。帰宅難民だ…。今日は、カード使えないでしょ?と、現金でお支払い頂いた……。深夜になり気温も下がってきた。。早じまいして、自宅の掃除するかなぁと、思ったところに、

「チリーーン」

高橋さんが、職場の大崎から…途中、ラーメンを食べて歩いて帰って来た、何と五時間…。店を心配してくれての御来店、有難い限りだ。深夜一時を過ぎて…さすが今日は閉めよう、、シャッターを下ろして自転車にまたがったところで、丹波さんが向こう側からやって来た。

「おーー!今日は、さすがに終わりすか?」

「いゃぁーごめーん、自宅が大変な事になってまして……」

彼も皇居前から代々木上原までハイエースで、六時間かけて御帰宅だった……一杯やりたくなる気持ちもよくわかる。自転車をこぎ出し、代々木八幡のローソンに向かう、、冷え込む深夜にも関わらず、沢山の人々とすれ違う、、、コンビニに到着、ポケットに手を突っ込んだスーツ姿のNさんと鉢合わせ

「おー!、おー!、Nさん、大丈夫でしたか?」

「おぅおぅ!ますたー!うん、うん、大丈夫、、大丈夫、電車がさぁ〜動いてないからさぁ〜渋谷のキャバクラで、一杯やってたょ♡」

   まぁまぁ、ご機嫌な週末、、手を振り別れた後、コンビニ弁当でも買って帰ろうと、店内に入るも(えーーーー!?)店内には、既に、何も無い……、それを知らない人々が、続々と入店してくる不思議な光景、何故か、消しゴムまでもが売り切れになっていた…。諦めて帰宅するも(そうかぁ〜)エレベーターは、止まったままだ、、真っ暗な非常階段を手すりをしっかり握り、上り続ける…2F、3F、4F……、ヘロヘロになって13Fに到着、、鉄の扉を開ける前に立ち止まり、冷たい風が〝ビューーーッ〟と吹く、遠く広がる渋谷の街をおっかなびっくり見渡してみる……。今夜は、赤く点滅している航空障害灯が、不気味な生命体に見えてきた……。

「ふぅー。」

いゃぁ……しかし…、明日からどうなるよ?どうするよ?陽はまた昇るのか?

 

東京に、住みながら自然の脅威を全身で感じた…八年前の出来事でした。

 

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