今晩は、店主の石原で御座います。その夜、開店して直ぐに、スーツを着た紳士が御来店、、。若干、いや、かなりの開店準備が整っていないも…着席の御案内をさせて頂いた。
「いらっしゃいませ……」
「………チンザノ、ドライと…白菜の浅漬けをお願いします。」
「かしこまりました。」
チラチラ、視線を感じるも、、シャツのボタンを閉めながらダスターで、カウンターを拭きあげる。(よーーし、出来た……)
「すみません、バタバタしまして……申し訳ございません…もしかして…お近くですか?」
お決まりの切り口で、会話のきっかけを作るも
「いえ!近くないです!」即答…。
更なる展開に備えて次の一手を考えていると
「……あのぅ……マスター…下北沢の〝イディオサバン〟に居ましたよね、、、」
一瞬にして、浅漬けを搾る手が止まる………。顔を上げて…彼の顔を直視する。
「えっ?………だれ?……も・しか・して………レニー……?」
「そうです!レニーです!」
「オーーオーーー!何だよ、早よ言えよー、緊張したじゃねぇかよー、、しかし……何年ぶりだ…?」
「多分……二十年は、経ってます。」
記憶をたどりながら、二人で〝バカ1号〟〝バカ2号〟となり三軒茶屋のキャバクラに繰り出した事を思い出す。
「あった!あった!行った!行った!」
と、爆笑の出来事をすり合わせる…。
どうやら………レニーは、当時…呑みながら私に、悔し泣きをした事を気にして、距離が出来たと言うが、、私には、全く記憶がない。
「そーーなんだ!」
で、久々に下北沢に行って飲み歩いて〝電気クラゲ〟のマスターに当時の話をしたら、〝ヒサヤなら、ここにいるよっ〟て、あっさり教えてもらった。
「そーーーなんだ!」
有難い話だ……ぜひ、御礼に行かなければ、いや、いや、…もう少し暖かくなったら、普通に呑みに行こう。。是非、貴方様にもアフターにお付き合い頂きたい、下北沢デープナイト……〝ピーチ〟〝OK〟〝水蓮〟〆は〝お好み焼きせっちゃん〟で、野口焼きかな…。
レニー……………プロボクサーを目指して札幌から上京、私が、キャバクラに連れ出していなければハマる事はなかったというが………、三軒茶屋を卒業後、新宿、五反田、六本木と、一人キャバクラを楽しみ、妻とは、そこで出逢い結婚、三人の子供にも恵まれ幸せな家庭を築いている。