ある夜の出来事 時間よ止まれ 最終話

       タクシーに、乗り葬儀場に向かう。

    ジョニーの住む町かぁー…窓の外に目を向ける。

  二十分遅れて到着すると、入口には、〝KAWASAKI〟大型バイクに、花が手向けてある。

(くぅーーーー、、、。)

   私の涙腺は、緩み始める。

葬儀は、粛々と進んでいた。記帳して案内をされた席に着席、、周りを見渡す、、百人ぐらいは参列してるだろうか、、バイクに始まり、エレキギター、皮ジャン、スカジャン、白のスーツ、チームジャンバー、店の看板などなど、今となっては、思い出の品々があちこちに展示してある。BGMは、オール矢沢さん、、参列者男性のほとんどがリーゼント姿、、お店に来てくれた先輩が、代表で〝お悔やみの言葉〟を読み上げる……すすり泣く声だけが響く、

 

「…それでは、最後に……お一人様づつ、お棺に別れ花をお願い致します、、、。」

参列者、ほとんどが、うなだれ立てなかった、、支えられながら、親族から最後の別れを惜しんでいく…私もパイプ椅子の間をすり抜け、最後尾に並び始める。前方から嗚咽する女性、、。

百合の花を一輪を持ち、いよいよ私の番となり、一年ぶりの再会…、、。

 

「オィオィ…ジョニー、、何だよ…今日もリーゼントじゃねぇかぁ…」

   私は、 頬に手を添えそうになる。

(おーー、ヒサヤー、やっと来たか、、来るのが遅いわー、、)  魂の叫びが聞こえた。

涙腺は、完全に崩壊する。

 

出棺の準備も整い、手を合わせお見送り…名曲、〝時間よ止まれ〟が、大音量で流された。

  かれこれ、色々な式に参列させて頂いたが、

  こんなに、素晴らしく…素敵に感動した式は経験した事がない。

ジョニーの人生集大成ラストステージと思えた。

 

      一人、タクシーで、来た道を歩く事にした…慣れない革靴で、町を見渡しながら無人駅に向かう。

  出るのは、ため息ばかり、、在来線に乗り継いで、東京へ

  テンションが上がらないので、臨時休業しようかと思ったが、

〝ヒサヤー、店は開けろ〟

ジョニーが、言ってる気がした。

  気持ちを入れ替えて…開店準備も整い看板に電源を入れる。

 

      不思議な夜だ。

五年ぶりのお客様から、御常連から、一見のお客様で、ドラフルは年、一、二度の満席状態となる。

「ねぇ?マスター、マスター、今日、何?平日だよねぇー?」

右から左へと、カクテルを作る…凹んでる時間もなく現実に引き戻される。

 

    閉店後、ジョニーが、好きだった矢沢さんのアルバム〝ゴールドラッシュ〟をBGMに、一杯飲み干す。、、、、そうだ!ヤベェ、、ジョニーのお酒もグラスに、氷を入れタンカレージンを注ぐ、、。

「チーーーン」

    一人、乾杯?献杯?……泣けてくるぜよ…。

   年下だったが、兄貴のような存在だったなぁ…ジョニーなぁ…。

来年の夏は〝愛知で、一緒に走ろうや、なぁー、ヒサヤー〟電話で話をしたのが、最後の会話となってしまいました。

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                                                                                                             ジョニーのバイク(実物)                                                                                                   END   

すみません!来週、もう…一話だけ…お付き合いください!

〝ある夜の出来事 ジョニーの伝説〟です。