その夜、二組のカップルが、御来店頂いた。真冬にもかかわず上着は、小脇に抱えて、赤ら顔、、、どこか…スッキリしているのが感じとれる。
「いゃ〜ぁ〜気持ち良かったねぇ〜」
「あれで、何度ぐらい?」
「どうだろう……」
…銭湯帰りのお客様だ。
「生ビールを四つ、お願いしまーーす。」
美味そうにビールを飲み干す。
本日のお客様…銭湯愛好家のランナー、毎週土曜日は、都内の銭湯に、各自、ランニングで、目的地の銭湯に向かう。今宵は、代々木上原の名湯〝大黒湯〟
ひとっ風呂の後は、お楽しみの一杯、その街、町で、居酒屋巡りをするスタイル。
「ヘェ〜、楽しそうですねぇ〜」
「どうですか?次回、マスターも……。」
「いやいや!」
ジョギング→銭湯→至福の一杯……いいかも。
何かと、影響を受けやすい私は、ある朝から走り始める。
1キロ、3キロ、5キロ、10キロと距離を伸ばし、、、最終的に、湘南国際マラソン42.195キロに、参加するまでになる。散々な結果だったが、完走は出来た。
その後もジョギングは続けるが、ある日、二日酔いと、ストレッチ不足から右膝靭帯損傷、半年は、走れないと診断される。
「……マスター、大丈夫?」
「うん、うん、大丈夫……。」
…気分は、映画〝マッドマックス(79年)〟のメル・ギブソン。
足を引きずりながらの接客が続いた。