その夜、彼女のシェリーが住む代々木上原に彼氏のマーロンが飲みに来てくれた。
「いらっしゃい!」
「…サイドカーをお願いします。」
マーロン(21)は、フレンチレストランで働くシェフ、御常連のお客様では最年少かもしれない。与太話から
「…今度、バイクの免許を取りに行って来ます!」
「…へぇ〜いいじゃない…俺も好きでねぇ〜…で、ナニ?何?何乗りたいよ?」
「 Z2 」
「ゼッツーーー?!」
私は腰が抜けて過呼吸になってしまった…コレはねぇ…
一杯呑まないと話がデキナイ。
ロックグラスに氷を入れてウィスキーのジョニクロを注ぎ、ちょとソーダで人差し指で〝くるっ〟と仕上げる。
(中略)
マーロンは、Z2のデザイン、エンジン音は他のバイクには無いカッコ良さがあると自論を語った。私と、ふた回り、いゃ…み回り近く離れている男同士が一台のバイクを通して語り合える夜はそうそうない。
「…で、免許はどこまで?」
「何も持ってないです!」
Z2(ゼッツー)
日本が世界に誇るカワサキ重工業が製造した大型バイク、1972年にZ1(900cc)の輸出向けに販売開始、翌年の1973年にZ2(750cc)の国内販売が始まる。正式名称は750RS、通称ゼッツー、地域によってはゼットツーともいわれる。
発売から47年経った今でも…その唯一無二の圧倒的な存在感に魅了してやまないライダーは未だ多い。色褪せるどころか更なる輝きを放ち愛おしくも切ない気持ちになっているのは私だけだろうか?
…チョット、はよおかわりちょうだい。