ある夜の出来事 愛と青春の旅だち

朝は小鳥がチュンチュン鳴き始め

春の訪れが近いと感じる今日この頃

ふと、

思い出す御夫婦がいる。

 

その夜____

何度となく店内を覗き込み

〝チリーーーーン〟

「バーとか来た事ないのですが…」

「ぜんぜん、大丈夫ですよー。」

私は手のひらを見せて

カウンター席に御案内した。

男性はジントニック

女性は

「弱めのカクテルを下さい。」

軽いコミニケーションから

アマレットとオレンジを使用したカクテル

ボッチボールを提供させて頂く事にした。

二人は向き合い

小鳥が囁くように語り、笑う。

その後も

何度となく通って頂き

私からお声掛けさせて頂いた。

「いつもありがとうございます、お近くですか。」

「はい、大山町です。」

男性はヒロシ

女性はサクラ

会話の流れから

二人の馴れ初めを伺う事になる。

2011年3月11日

東日本大地震が発生した

当時、大企業は在籍したまま

福島県でボランティア活動する人を募集していた。

別会社の二人は

手を上げてボランティアに参加する

毎日、毎日、

泥だらけになり福島の復興を願った。

ボランティア最終日、

多少の会話はあったらしいが

もう

二度とサクラに逢えなくなると思った

ヒロシは

「あのぅ…すみません、よかったら。」

メールアドレスと名前の書かれた

メモ紙を別れ際のバスの中で手渡した。

二人は東京に戻り

会社勤めに専念する。

紙切れ一枚の

メールアドレスを頼りに

サクラはヒロシに連絡をとり

東京で再会、

交際に発展し結婚した。