その夜、いゃ…まだ明るい夕刻時。
「生ビールはありますか？」
看板を点灯して五分、女性二名様御来店頂いた。私はマスクをアゴから口元に移動して
「お好きなお席にどうぞ！」
聞こえてくる会話から久々に再会した親子と判断できた…ビールを飲み干して、
「外食も出来なかった、五ヶ月ぶりの生ビール美味しかったわ」と笑顔のお母さん。
私も自然と笑顔になる。
「また来ますね。」
「是非、お待ちしております！」
実は…ここだけの話…生ビールはこの樽を最後にやめる予定をしていたが、ここに来て気持ちが初心に戻された。
〝やっぱり…生ビールは続けよう〟誓った夜となりました。
2020年3月27日(金)
東京都外出自粛要請初の週末、、、カウンターを拭きながら外を見る通行人も少なく足早に家路に急ぐ人々。
そんななか、マーベリックが女性と御来店頂いた。
「おーーおーーおーーどーも、どーも！」
〝いらっしゃいませ！〟言えなくなってきた。
ジンフィズと、モヒートのご注文を頂く、シェイカーに材料を入れながら近況談議、マーベリックの仕事がキャンセル続き明日の打ち合わせも延期、このままでは今後の給料に響いてくると頭を抱える。
「その前に……マスターのところにと思って来ました！」
(とほほ、、、泣かせるではないか……。)
ちょっと、待てよ…話に夢中になりシェイカーに材料を、どこまで何を入れたか忘れてしまった…バレないように作り直しだ。
彼女とは夏の予定を語り合う、旅行、映画、花火大会、レストラン、楽しい時間を努めるものの先が読めないまま振り出しに戻る。
(…あれから約五ヶ月)
セミが〝ジィーーーージィーーーー〟
お盆ウィークに突入した代々木上原界隈は例年並み人出が少ない。旅行中なのか？巣ごもりなのか？今年は、あの日本道路公団が渋滞予測をたてられないと発表はナシ。イベント、フェス、ライブ、祭り…ことごとく中止となった。来年は倍返しで楽しみますよー…いや、じゅーーーばい返しだぁ！
でもねぇ…せっかくの夏、日本のらしい事ないですかねぇ？
そこで！今月は浴衣で御来店頂いたお客様にグラススパークリングワインと三種のチーズをサービスさせて頂きます！
今夜も熱帯夜…引き続き宜しくお願い申し上げます。
日本の夏はココにもあります…伊豆市、峠の茶屋さん最高です！
七月の東京…ずーーーーと雨か曇り…梅雨明けは八月との噂もある。オリンピックが開催されない大泣きの表れだとビリーがつぶやく…そんな足下の悪い夜でも御来店頂けるお客様にはありがたく感謝しております。
店における消耗品の代表格〝グラス〟お客様が割ることはほとんどありません。私が洗い物最中、拭き上げる時、氷を入れた時などなど不注意からクラックやチップを誘発するのです。
その夜、満席(現在九名様まで)でハイボールを頼まれるとグラスが足りない事に気付いたのだ、、。早速、休日を利用してグラス専門店へ向かう。二十年以上お世話になっているお店…看板はなし、扉は重く…一見さんは入りにくい門構えですがどなた様でも入店可能。
店内では暗黙のルールがいくつかあります。
〝基本…一名、多くて二名で訪問して下さい〟
〝お手持ちのバッグ等は商品に当たらないよう突き当たりカウンターの横の荷物置き場に置きます〟
〝店内ではお静かに〟
〝商品を手に取る時は一言声がけを〟
芸術品ともいえるバーグッズ！
オリジナルからビンテージのカクテルグラス！
バカラからロブマイヤーなど一流品も鎮座しております！
今回、七客のグラスを入荷しました…お楽しみに！
で！お店はどこゃーーー‼️
ハイ！浅草の創吉さんでございます。
その夜…
「ここは何屋さんですか？」
「あとで寄ろうと思うんですけど…何時までですか？」
「飲み物だけでもいいですか？」
緊急事態宣言解除以降、御通行中の皆様によく聞かれるようになりました。その訳は…代々木上原界隈のレストランのラストオーダーが劇的に前倒しになっている傾向があります。ラストオーダーは22時、早い店は21時❗️
〝久々のデートをもう少し楽しみたい！〟
〝せっかくの代々木上原、終電までの時間を楽しみたい！〟
そんなお客様のおこぼれを確実に頂戴しており…感謝感謝でございます。
昨年までは、二回転三回転と、お客様を回していたお店が一回転勝負となっていると推測します。私が帰宅する深夜、飲食店の看板は消され誰ともすれ違う事なく自宅に到着する事も珍しくなくなった。
当店も例外ではなく…
※平日18:00〜25:30(フードL.O.23:00、ドリンクL.O.25:00)
※日曜祝日18:00〜24:00(フードL.O.22:00、ドリンクL.O.23:30)
※当面の間、五名様以上での御来店はご遠慮頂いております。
そんな百年に一度の夏、ご理解ご協力のほど…引き続きBar Dragon Fruitを宜しくお願い申し上げます。
その夜…
「20時で、予約してる鈴木です。」
「先ほど、電話した佐藤です。」
「こんばんはーー、田中で、四名予約してます。」
これら全てお隣の人気〝和食居酒屋青〟さんのお客様、入口を間違えての御来店、、。
「はい…ご予約は、、青さん？…お隣りさんになりますねぇ〜」
歯を見せない程度の笑顔で、手の甲は下に、奥を指します。
この後の反応が……百人、百通りなのです。
「すいませーーーん、間違えましたーー。」
ビックリする方、
無言で、〝そーーと〟退店する方、
爆笑する方、
心の底から恐縮される方、
彼女に、〝バチッ！〟思いっきり背中を叩かれる彼。
「失礼致しました…後程、お邪魔致します。」
本当に、御来店頂いたお客様もいました。
二名の男性が、御来店頂きボックス席で、生ビールを飲み始めるも…待てど暮らせどお連れ様が来ない。
「……マスター、ここ青じゃないの？」
「いゃ…あのぅ、、お隣りさんになります、、。」
ここは、最敬礼をして左手を真っ直ぐに。
「お時間までどーーぞ、ごゆっくりと、いってらっしゃいませーー！」
〝お客さん戻った？〟
〝休業中は何してた？〟
〝ここも禁煙？〟
今晩は、店主の石原で御座います。今夜もマスク着用で失礼致します。通常営業に戻り10日、テレワークのお客様が徐々に出社傾向、そんな夜当店のようなBAR は御来店頂ける。カウンター席が、三席…四席と埋まり、お客様が御来店、ちょっと密気味だなぁ…と判断。
「マーゴット、申し訳ないけどカウンターの中でお願い出来る？」
「えっ？ココ？ナカ？」
ハイヒールの足下、配管で転ばないよう丁寧にカウンター内側席に御案内、、、こうすればカウンター越しでソーシャルディスタンスは保たれる。今後もご協力頂くことがあるかと…是非、カウンター内側からの景色をお楽しみ頂ければ幸いです。
お客様同士も久々の再会、お互いの緊急事態宣言中の出来事を身振り手振りで会話を楽しむ、、。私はグラスを拭きながら店内を見渡し、久しぶりにバーのあるべき姿を感じた夜でもありました。
キャンディスの彼氏、ジョージはなんと！年内実家の岐阜県からテレワーク決定、逢えない毎日はLINEで連絡を取り合い寂しさを感じないという。県をまたぐ移動も緩和され、国内旅行のプランも絶賛交信中。こうなるとだ…ジョージは東京で高い家賃を払う意味がなくなり恋愛も新しいスタイルが始まるのかもしれない。まだまだ、不安材料はてんこ盛り…ドラフルでの時間は、少しでも面白おかしく笑顔溢れる時間となりますよう努めさせて頂きます。
それでは、2020年も後半戦突入
〝貴方と貴女と語り合いたい心と心の濃厚接触〟
引き続き、バードラゴンフルーツを宜しくお願い申し上げます。
