BARは大人の社交場である

夜風が心地良い

ドラフルは今夜も

二穴解放のフルオープンエアー

18:20

カップルに御来店、

開口一番、

「おーー暇そうだなぁー!」

女性が

フォローするかのように

「まだ、早い時間だもんねぇー。」

二人は談笑しながら御着席する。

「御来店ありがとうございます。」

「もー…酔っ払っているからさぁ。」

と、男性は

今日は昼から飲んでると椅子にもたれる。

私は

メニューとおしぼりをお渡しするも

メニューは見ない。

ハイボールを二つ。」

「何か…お好みのウィスキーはありますか。」

男性は

バックバーを見渡しながら

「うーん、スタンダードでいいよ。」

スタンダードとは

お気軽なウィスキーを意味する。

「安いので。」

とか言わないのがバーならではの

合言葉(流儀)なのです。

男性は

バーによく行かれている様子で

オーセンティックバーにも詳しい。

オーセンティックバーとは

広くいえば…

ホテルにあるような

ゆったりとした椅子と

幅広のカウンターがあり

私の様に

下ネタ連発しない

カチッとしたバーを意味する。

店内を見渡し

「ここは、カジュアルバーだなぁ。」

私が

目指して務めるバーに認定してくれた。

ハイボールを飲み干し、

男性は

近頃はクールなバーが減ってきた。

これは

店側の問題だけでなくクールに飲む

お客さんも減ってきたと語る。

(中略)

「外で煙草吸っても大丈夫?」

「はい、灰皿ないすけど。」

ポケットからデュポンライターを取り出し

煙草を吸う後ろ姿は

まるで

昭和の銀幕のスターだ。

銀座、六本木、麻布と

バーに通い詰めた感が否めない。

グラスは

こののままでいいからと

二杯目の

ハイボールを召し上がりお会計のサイン。

これもまた…

〝バーに来たら一杯では帰らない〟

男性ならではの流儀がそこにある。

「ごっつぁんねぇ。」

江戸っ子感満載で

しっかりした足取りで退店、

御年八十歳だと教えてくれた。

それでは

今夜も

この辺で

素敵な週末を

おやすみなさい。