ある夜の出来事 未来予想図

  その夜、女性が入口で、私に〝ピース〟

この場合は、〝二人、入れますか?〟の意味になります。

「どうぞ、どうぞ、お好きな席へ!」

後方から男性が…赤子を抱えているのか?

  いやいや、、違った…リュックサックを前に抱え込むスタイル、近年、混んでる電車内では、よく見かける光景です。

 奥のソファ席に着席、リュックを下ろして、多少の雑談から小田急線沿線に住む三十代のカップル(来年入籍予定)、代々木上原で食事の後、〝軽く呑んで帰ろう〟なり御来店頂いた。

 小一時間、聞こえて来る会話は、終始…、安心、安全、安定の〝AAA〟

 お代を頂き、彼は、手慣れた手つきでリュックを正面から抱え込む。

「逆ですよ」

ツッコミを入れようかと思ったけどやめときました。〝ぺこり〟と頭を下げて頂き

「お邪魔いたしました。」

「いえいえ!こちらこそ、ありがとうございます!」

私は、更に頭を下げます。

 

  街中でもリュックを前に抱える人を見かけると〝いいひと感〟を感じるのは私だけだろうか?

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ある休日の出来事 栄光のライダー

 はじめに、台風19号で被災された皆様には、心より御見舞い申し上げますと共に、一日も早く、以前の生活に戻られますよう願っております。 当店は、十七年間で、二度の床上浸水(約三十センチ)の災害経験があります。今回も土嚢を積んで、床から上げれるものは、全てカウンターの上に、冷蔵、冷凍庫、計六台は、レンガの上に、かさ上げ設置、コンセントは、ガムテープで穴をふさぎ、トイレには水袋を入れ、店は、臨時休業し自宅待機しておりました。

 

〝時に、自然は牙をむく…二度ある事は、三度ある。〟

 

  幸いにも当店は、何事も無く、本日も通常営業させて頂いておりますが、他人様の事とは思えませんでした。どうか、無理をされないよう御自愛下さいよう願うだけです。石原久也

 

 

  ラグビーワールドカップが、史上最高の盛り上がりを感じながら帰宅後は、録画しておいた日本戦をビールを片手に、ルールもイマイチながらも楽しく観戦させて頂いております…スクラムやタックルを見てると、「いてっ…いてっ…」と、体が起き〝モニョモニョ〟前のめりで、息を止めている私がいます。

国を代表する〝屈強な男達〟が来日をしている最中、今週は、、、

 

  オートバイレース世界最高峰(モトGP)のライダーが続々と、来日しております。タイGPから二週間、第16戦日本GP開催です。ご存知の通り、2019のワールドチャンピオンは、残り4戦を残してマルクマルケスに決まりましたが!今年も行きますよー。

   私の場合は、レース観戦と言うよりかは、あのモンスターマシーンから吐き出される〝爆音〟に牛串、もつ煮込み、唐揚げ、ケバブ、宇都宮焼そば、などなど、ビール片手に、酔い痺れるスタイルであります。例えるなら…夏の野外ロックフェスに、近いのかもしれません。今週末は、ツインリンクもてぎサーキットには、三日間で約八万人の同志が集合します。最寄り駅の宇都宮のホテルは、一年前から予約不可、取らしてくれないのが近いのかも。

 

 時速300キロ以上のスピードでは、表情は、窺い知る事はできないが、〝あの〟命知らずの勇姿を拝見させて頂く、、この年になっても…男が、男に惚れる瞬間はあるのです。

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                             昨年のバカ1号の様子

ある夜の出来事 カメラを止めるな!

      その夜、女性二名で、御来店頂く、、。

「お好きな、お席へどうぞ!」

「こっち?あっちにする?」

少し迷いながらも入口側のカウンター席に着席、東京弁と関西弁で、近況を語り合う。

久々の再会だなと判断出来る…ひとしきりの会話を終えた頃、、

「すいませーーん、写真お願いできますか?」

「もちろん!」

 

      昨年は、あえて…自撮りを楽しむ光景が店内でも見られたが、

近頃は、私にスマホを託して頂けるお客様が、増えて来た気がする。

  〝 任せて、ちょんまげ!〟

スマホを手渡して頂き、極力〝ヘリ〟をカニ挟みで持つ…、、これは、、以前、変なところを触ってしまい…カメラからインカメラ状態となり、戻せなくなってしまった経験を踏まえての所作となっております。

 

「はい!チーーーズ。」

「もう、一枚!いきまーす!はい、チーーーズ。」

「ありがとーうございまーす♡」

 

再度、〝ヘリ〟を持ち優しくお返しします。〝どれどれ〟と、言わんばかりに女性二人は、頭を寄せてスマホをの覗き込みます。

「、、、、、、、、、、。」

「?……撮れてます?」

「あのぅ……〝ぶれぶれ〟なんで、もう一度、お願いできますか?」

 

    赤面からの脈拍、血圧共に、急上昇、消えてしまいたいと思った秋の夜。

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ある夜の出来事 ジョニーの伝説

         その夜…二十一時過ぎ、店の電話が鳴る。

「おー、ヒサヤー?オレオレ、今からよー、ハネェーと行くでよー、ヨロシク!」

「えっ?……了解です…。」

愛知から彼女とドライブ…愛車のシーマ(ローダウン)に乗り込み、最寄りのインターチェンジで、通行券を抜き取り〝東京〟方面へ、、。東名高速、東京インターから首都高3号に突入、池尻大橋ランプ出口から下北沢のコインパーキングに停めての御来店…。

  閉店後は、私も下北沢ロックバー〝ピーチ〟の二階で、合流しての朝まで呑み……夕方まで、カプセルホテルで一休みして、愛知に帰ります。

BGMは、も・ち・ろ・ん・オーーール矢沢さん!

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                                                               真のEND

ある夜の出来事 時間よ止まれ 最終話

       タクシーに、乗り葬儀場に向かう。

    ジョニーの住む町かぁー…窓の外に目を向ける。

  二十分遅れて到着すると、入口には、〝KAWASAKI〟大型バイクに、花が手向けてある。

(くぅーーーー、、、。)

   私の涙腺は、緩み始める。

葬儀は、粛々と進んでいた。記帳して案内をされた席に着席、、周りを見渡す、、百人ぐらいは参列してるだろうか、、バイクに始まり、エレキギター、皮ジャン、スカジャン、白のスーツ、チームジャンバー、店の看板などなど、今となっては、思い出の品々があちこちに展示してある。BGMは、オール矢沢さん、、参列者男性のほとんどがリーゼント姿、、お店に来てくれた先輩が、代表で〝お悔やみの言葉〟を読み上げる……すすり泣く声だけが響く、

 

「…それでは、最後に……お一人様づつ、お棺に別れ花をお願い致します、、、。」

参列者、ほとんどが、うなだれ立てなかった、、支えられながら、親族から最後の別れを惜しんでいく…私もパイプ椅子の間をすり抜け、最後尾に並び始める。前方から嗚咽する女性、、。

百合の花を一輪を持ち、いよいよ私の番となり、一年ぶりの再会…、、。

 

「オィオィ…ジョニー、、何だよ…今日もリーゼントじゃねぇかぁ…」

   私は、 頬に手を添えそうになる。

(おーー、ヒサヤー、やっと来たか、、来るのが遅いわー、、)  魂の叫びが聞こえた。

涙腺は、完全に崩壊する。

 

出棺の準備も整い、手を合わせお見送り…名曲、〝時間よ止まれ〟が、大音量で流された。

  かれこれ、色々な式に参列させて頂いたが、

  こんなに、素晴らしく…素敵に感動した式は経験した事がない。

ジョニーの人生集大成ラストステージと思えた。

 

      一人、タクシーで、来た道を歩く事にした…慣れない革靴で、町を見渡しながら無人駅に向かう。

  出るのは、ため息ばかり、、在来線に乗り継いで、東京へ

  テンションが上がらないので、臨時休業しようかと思ったが、

〝ヒサヤー、店は開けろ〟

ジョニーが、言ってる気がした。

  気持ちを入れ替えて…開店準備も整い看板に電源を入れる。

 

      不思議な夜だ。

五年ぶりのお客様から、御常連から、一見のお客様で、ドラフルは年、一、二度の満席状態となる。

「ねぇ?マスター、マスター、今日、何?平日だよねぇー?」

右から左へと、カクテルを作る…凹んでる時間もなく現実に引き戻される。

 

    閉店後、ジョニーが、好きだった矢沢さんのアルバム〝ゴールドラッシュ〟をBGMに、一杯飲み干す。、、、、そうだ!ヤベェ、、ジョニーのお酒もグラスに、氷を入れタンカレージンを注ぐ、、。

「チーーーン」

    一人、乾杯?献杯?……泣けてくるぜよ…。

   年下だったが、兄貴のような存在だったなぁ…ジョニーなぁ…。

来年の夏は〝愛知で、一緒に走ろうや、なぁー、ヒサヤー〟電話で話をしたのが、最後の会話となってしまいました。

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                                                                                                             ジョニーのバイク(実物)                                                                                                   END   

すみません!来週、もう…一話だけ…お付き合いください!

〝ある夜の出来事 ジョニーの伝説〟です。

ある夜の出来事 時間よ止まれ ④

    夕方、まかないを頂きながらスマホをスクロールしていると…

〝ジョニーが、天国に旅立ちました……〟

SNSから情報が入ります。

 

「マジ?」

  箸を床に落として、頭を抱え込む。

    この数年、体調が優れないと聞いていたが、ここまで、悪化していたとは、開店準備が一気にペースダウン。

  開店するも、、うわのそら…ジョニーとの思い出が、走馬灯のように駆け巡ります。

 

    最後のお客様をお見送り…看板を下ろし、一杯呑みながら、、、

「よし…決めた。」

  明日の告別式に参列する事にした。

 

       翌日、新幹線で下り、最寄駅から更に、在来線に乗り継ぎ、目的駅に到着すると無人駅だ。

  ポケットから切符を取り出し、回収ボックスへ、、

   今の電車で、この駅で下車したのは、私だけだ、改札口を出ても道を尋ねるのに、人っ子一人といない、葬儀場まで道がわからない。さてさて…困ったぞ、、刻々と時間が経つ、、全く…人がいない。

   、、、、見回すと、サビサビの看板に

〝タクシーの御用命は、こちらへ!〟

  電話番号の記載がある、スマホを取り出し、数字をタップして久々に、人と話をした感覚に陥いります。

  二十分ぐらい待っただろうか…白い手袋をしたお爺さんの小型タクシーが到着します。

                                                                次回、最終話です。

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ある夜の出来事 時間よ止まれ ③

      その夜……矢沢さんライブ帰りのジョニーは、柳屋のポマードで、頭をガッチリ固めた、友人と三名で御来店…既に、四軒目だという、、。

「ヒサヤー、タンカレーのロック、四つ!」

「ヒサヤに、先輩を紹介出来て、、嬉しいわー」

「乾杯!」

「…どうも、どうも、恐縮です…はじめまして‥」

       ここからは、先輩とジョニーが、矢沢さんへの思いを熱く語り尽くします…桁違いに凄かった…。

  人生そのものです。

    ちょっと、、、ここには、書けません!

と、申しますか…私の文章力では、全くもって伝わらない…不可能ですわ……はい。

 

 午前二時手前、 お会計のタイミング…ジョニーは、、

「ヒサヤー…今日もありがとーーサンキュー、サンキュー!」

「いやいや、こちらこそ…ありがとう。」

いつもの握手からのハグ、、〝ぽんぽん〟お互いの背中を叩く。

「またな…」

「おぅ、お互いに、体に、きーつけてな…」

 

       後悔と…悔いしか残らない。

この夜が……ジョニーと、会う最後の夜となってしまいました。

                                                                                                     つづく               

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