ある夜の出来事 君がいるだけで

    今晩は、店主の石原で御座います。その夜、クリスティが、初めて彼氏を連れて来てくれた。なかなかのイケメン、二人のバランスもとれてると、一瞬で判断をした。オーダーは、〝ディタトニック〟

「彼氏は?」

「あっ、同じでいいです。」

なんだか右に倣えな感じだが、、、〝何を頼んだら、いいのかわからない〟が近いのかもしれない…。二人の会話もひと段落した頃……、クリスティが私に…

「ねぇ〜ねぇ〜マスター、聞いてよーー、このスーツどう思う?」

「どう?似合ってるし…、格好いいじゃん、うん…。」彼氏は、〝余計な事は、言わなくていい〟的な顔をして、クリスティを見る。

「マスター、本当に、わかんない?」

「え?………なに?全然、わからない、、、」

クリスティは、彼氏に〝立って立って〟と、左手を上下に動かす…。〝しょうがないなぁ〜〟彼は立ち上がり、姿勢を正して、スーツの襟を正す……。

「どう?マスター、これでも、わかんない?」

「はぁ……?何?なに?ネクタイも似合ってるし……なんか…ダメなの?」

 

「こーーーれっ!」

     クリスティは、 左手で彼のジャケットのボタンを外し、ガサツに広げた。そこには、私も生まれて初めての光景が目の前に広がる……。ポッコリ出た腹は、ズボンのホックが外れ、ファスナーも下から数センチ上がっているだけ、、、。ベルトだけで、固定されている。股間には、謎に広がる白いワイシャツのトライアングル……、脳裏に焼きつき、しばらく、言葉が出てこない……。

「こ、これは………、」

    彼の説明が始まる…。 就活時代に着ていたスーツが、この二年で、十五キロの増…。ジャケットのボタンを閉めていれば、街中、電車、徒歩、カフェぐらいは、何の問題もないという……。

なるほど……、、

「いやぁーーー、いいんじゃないすか!洋服を大切にするって事は、これから、痩せるかもしれないし……ねぇ〜クリスティ……、問題ない!アリアリよ!」と、バーテンダーとして、これ以上の答えが見つからなかった…。

「また……、適当なこと、、言ってぇ……。」クリスティは、微笑んでくれた。

 

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