ある夜の出来事 百年目の夏

その夜_____

男性二名に御来店頂く

「僕、ジントニック下さい。」

「私は、フレンチ75をお願いします。」

杯も進み

会話から飲食店で働いてるとわかった。

タイミングを見て

「あのぅ…

差し支えなければ何系の飲食ですか。」

「はい、〇〇屋の〇〇です。」

「えーーー全然、知ってますし、

五、六回お邪魔させて頂きました。」

(中略)

ジントニックの男性は

都内で

百年続く飲食店の

三代目の若旦那だった。

今宵は

代々木上原でお寿司を食した後

気になっているバーに行こうと

御来店頂いた。

私は

飲食業界の端くれながらも

同業者同士の話が出来るのは

ホント楽しい。

パンデミック禍の時短休業の苦労話〟

〝昨今の物価高騰による食材費の増加〟

〝ネット、SNSを活用しての発信は不可欠〟

などなど

私は

若旦那と話をしているうち

身の引き締まる思いとなった。

初代の時代は、

休みは元旦のみ、

お客様に喜んで頂けるならと休日はなかった。

「マジっすか。」

現在はスタッフもいるので

週一、二休みで夏休みもしっかりとるようにしている。

驚いたのは

この一年、

出入業者はバンバン値上げをして来るが

二代目の意向から

一切値上げはしていない、

あるネタのレシピに関しては

二代目も知らない

初代から直伝に教わった

秘伝のレシピだと語ってくれた。

夜も更けて、

若旦那は

スマホタップして

〆のサイン。

「なんか、色々喋っちゃて…」

「いえいえ。」

お見送りさせて頂きながら

こんな話も聞けた。

長年通って頂けるお客様は

初代と味が変わった変わらないで

意見が二分すると言う。

それでは

今夜も

この辺で

全国的に熱帯夜予報です

水分補給を忘れずに

good night…