今晩は、店主の石原で御座います。
その夜、カウンターの椅子にもたれながら、両手を頭に乗せて、一杯呑んでいる彼の携帯電話に、彼女からの着信
「今、タクシーに乗ったから‥‥。」
彼は「?」
後に、一分も経たないうちに、店の前に、
「チッカ、チッカ、チッカ」と、ハザードを点けたタクシーが止まります。
ん?彼は、立ち上がり彼女が、乗車しているのを確認します。
「えー?何だよ、お前、どっから乗って来たんだよ?」
「代々木上原」
「はぁ?」
どうやら、突然の激しい雨風の為の選択だったようだ。
「だったら、コンビニで傘、買って来ればいいだろよーー」
彼女に詰め寄ります。
ダメダメ!そう、綺麗に巻かれた彼女の髪型は、美容室の帰り道、最高の状態で、彼に、逢いたかったのです。
なるほどねーー
「いやぁ〜マジで、佐々木希かと思いましたよ‥‥ホントに、ホントだって、」
私も調子いい事を言って、御着席頂きます。
「あのねー、マスターね、金、払うのは俺だよ‥‥。」
傘もささないで、タクシーの助手席の窓から体を入れて支払う、彼の後ろ姿は、雨に濡れている‥‥。