ある夜の出来事 3.11 (前)

       今晩は、店主の石原で御座います……あの日から…八年………。

「お店は、大丈夫でした?瓶とかグラスとか、営業はされたんですか?…。」

と、御質問を頂く事が多いので、 そこで、今夜は、当日の出来事を二回に分けて、お話をさせて頂こうと思います。

 

14:45

      私は、自宅(当時、富ヶ谷)マンション十三階で、ワイドショーの[ミヤネ屋]を見ながらシェーバーで、髭を〝ジョリーー、ジョリーー〟と出勤前の準備中…テレビの中では、石原慎太郎知事が、都知事選に向けて、立候補の可能性が出てきたと…宮根さんが解説している。(ふーーーん、そうなんだ…)切りのいいところで、テレビを切ろうとリモコンを持つ。

 

14:46

      突然……〝グラグラッ…グラーーー〟と、立って居られないほどの揺れを感じる……。

地震だ……」

見ていたテレビが、テレビ台から落ちそうになる……とっさに、抑え込むもテレビ台も右へ左へと滑っていく、(おい…おい…)部屋の扉という扉が全て、全開となり〝パリンパリーーーン、ガシャーン〟と音を立て食器、グラス、置物、お酒が床に落ちまくる……。これは、危ない、、、細いペンシル、マンション…十三階…〝ボキッ〟と、折れて…人生が終わると思った…その場合、根元から折れてくれたら代々木公園の木々がクッションとなり助かるかもしれないと、本気で本気で思った、、、。今こうやって書いてるだけで、動悸が激しくなってくるのがわかる……。後に揺れも収まり、外から空襲警報並みの爆音のサイレンと共に、地震発生のアナウンスが流れる。(これは…やばい…やばい…大変な事になった……店は、大丈夫か?)そう思うと、後片付けは後だ…足を切らないようにと、スリッパを履き…、〝バリバリ〟とガラスを踏みながら玄関に向かう。廊下に出てエレベーターホールで気付く…(そーーかぁ…エレベーターが、止まってる……。)横にある鉄の扉を開けると、〝びゅ〜〜ゅ〜〜ゅ〜〟突風が吹き込む…。骨組みだけのスカスカの非常階段、腰が抜けそうになる……オィオィ…他に降りる方法は無いのか?と、一度、扉を閉めるも……ないな…と判断、、屁っ放り腰にも程がある姿で、13Fから降りる始める…12F、11F、10F………8F…しばらくすると、下の階からヒールを〝カン!カン!カン!〟と音を立てながら階段を登って来るのがわかる…鉢合わせした瞬間、お互いに

「あっーー、大丈夫でしたか?」

「ええ、ええ、何とか…僕は、13Fですけど……部屋は、めちゃくちゃです…。」

「えぇ〜〜やっぱり……やだ…もぅ…どうしよう……」

住人の女性が、タイトスーツに、ピンヒールで階段を上りにくそうにすれ違った事をよく覚えています。普段、挨拶もそこそこの住人が、お互いの安否を気遣うと、同時にさっきまで〝死ぬかも〟と思っていた私が、女神とすれ逢い〝生きている〟と、実感をした瞬間でもあった……3F、2F、1F…よかった!よかった!地上に着いた…、この安堵感は一体何だ?そこには、途方に暮れた人々が……この続きは後半にしましょう、、、本日も足元の悪い中、、沢山のお客様に御来店頂き、誠に有難うございました。

 

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