ある夜の出来事 VISITORS

      その夜、貴方様の〝懺悔〟を首をふりふり〝張子の虎〟状態で、拝聴させて頂いた。

大丈夫、大丈夫、よく話してくれましたね………何の問題もありませんよ、、神のお許しを待ちましょう、、待ちましょう、、アーメン、、。

  今晩は、牧師の石原で御座います……。おっと!失礼、、店主の石原です。

         その夜、帰り支度も整い、時刻は、深夜三時手前…店外に出ると、横のタバコ自販機の前に、一台のチャリンコ…前後のカゴには、満載に積まれた洗濯物…その隙間からは、腰を下ろして、一服している見知らぬオッチャン。

「終わりかい?」

「えっ?はい……?」

       声をかけられるとは思っていなかったので、驚いた…が、軽く会釈して〝おやすみなさい〟と、歩き始めた私を見て………、、

「いゃぁーーー、今日の現場は大変だったぁーー、朝からさぁー、大井町で配管工事でよー、昼前から親方に呼ばれて新橋で、合流してさぁー、塩ビ管のサイズが合わないしよー、これがよー、地下三メートルの深さでよー、、、、」

      一気に、話かけられた。私は、無視出来ずにその場で立ち止まる。

チャリンコの隙間から作業着を着たオッチャンが、腰掛けたまま右手にタバコ、左手には、〝マックスコーヒー

「ふぅーーー。。」

と、鼻から煙りを思いっきり出す……酔ってるわけでもなさそうだ。

「そーですか……」

「そりぁー大変でしたねぇー」

と、何故か、オッチャンの一日の出来事を閉店後の場外で聞く事になる。

       五分、十分、十五分と、立ち話が続く、溜まった洗濯物をコインランドリーで洗濯中に、私と出くわした状況のようだ…、、ここでも首をフリフリ〝張子の虎〟状態…切りのいいところで帰ろと、

「…じゃ、すんません…お先です……。」

と、切り出すも

オッチャンは、離れて行く私に

「明日はよーー、町田の現場!安くて、美味い、めし屋があってよーー……」

私が見えなくなるまで 、語りかけていたが ……振り返る事が出来なかった。

 

        神よ、オッチャンよ、こんな私をお許しください、、、。

 

f:id:bardragonfruit2002:20190529194851g:image