ある夜の出来事 My Revolution

今晩は、店主の石原で御座います。その夜、

「ち、ち、りーーん」と弱々しい音色と共に、ゆっくりとドアが開く、、、

「いらっしゃい…、ませ…。」すらーと、した御婦人が……

「えーーー、祥子(仮)さん!」

二年ぶりの御来店だ。杖をつきながら、懐かしそうに店内を見回し、私を見て誰かに似てきたと言いたい様子だが、名前が出てこないようだ…。祥子さん……、カウンターの椅子は、背が高すぎるので、杖で、奥の席を指しソファ席に着席。私は、スツールで、接客させて頂いた。

「いゃー、お元気そうで何よりです…。」

さかのぼる…二年前の夏、祥子さんは、〝モスコミュール〟を召し上がりながらの一服

「ふぅーーー。」

身長、百六十五センチ、三十八キロまで、体重が落ち

「ねぇー、祥子さん……、頼むからさー、病院、行きましょうよ…。」

説得しても首は、横に振るだけ…軽い熱中症と思い込みから自宅療養の後、救急搬送。何と、ステージ四の癌と判明…。即、入院となり強制的に親族の住む大阪に転院。この間、わずか、一週間。今だから言えるが、もう会う事は、ないかもしれない…と、思わざるを得ないぐらいの衰弱ぶりだった…。闘病生活丸二年、完全復活遂げた強者、祥子さん。一人で、新幹線に乗り遊びに来てくれた。お酒も煙草も当然絶っており、養命酒からはじめてみようと思うぐらい、顔色も良くなっていた、、。今回の上京は行きつけの店を回るそうだが、多分、、十軒は、下らないと思う。祥子さんの強者ぶりは、他にもある。宝くじ、ナンバーズ、ロト、ミニロト、スクラッチカード、競馬、などなど、サイコロを振って信じられないぐらい当たる。。。時には、当たり券を私に差し出して

「何か、美味しいものでもどうぞ……」

「えーーー!マジっすか?いんすか?!」

遠慮の〝え〟の字もないままポケットに押し込む…。そんな出来事が、懐かしく思い出される。手を添えさせて頂きながらの退店、表にある観葉植物と、宇宙的な会話を交わしながら、三軒目の出発、不思議ちゃんぶりも健在だ、、、。

「お元気で!」

「石原さんもね!」

「ありがとうございました」

いやぁー、ねぇー、ここからの話は、誰にもした事ないのですが……、何かと、影響を受けやすい私は、鉛筆を削りサイコロを製作、毎週、毎週、代々木上原駅の宝くじ売り場で、サングラスを掛けて、コソコソ、コソコソ、くじを購入する様になる、、、これがねぇ〜……、一ミリもかすりもしない…、もーーねぇーーー、わりーけどねぇー、かれこれ、六桁を超える投資額、、私には、博才は、無いなと確信…、完全に封印をした。f:id:bardragonfruit2002:20181130015544j:image