ある夜の出来事 銀座久兵衛

今晩は店主の石原で御座います。

 

その夜二十三時を超えた頃御常連の女性が御来店するなり

 

「これお寿司なんだけど‥」

 

紙袋に入ったお土産を私に手渡します。

 

「えっ?マジですか?!」

 

「ち・が・う・の・彼氏にお土産なの!だから冷蔵庫に入れといて♡」

 

何だよ〜紛らわしい事しやがって‥期待してしまったじゃねぇかぁ‥全く、、

 

「でもねぇ〜お寿司固くなるから常温保存の方がいいよ」

 

「えーーー彼氏があたってもややし♡」

 

「はぁ?じゃあ、外にある俺の自転車のカゴに入れときなよ!」

 

「え〜〜盗まれたりしないかなぁ♡」

 

 何だよーー全く、私の心は穏やかでは、ご・ざ・い・ま・せ・ん・

 

「じゃあ…あなたねぇ〜カウンターの端っこで座って見張ってなよ」

 

彼女は一杯呑みながら窓越しに寿司折を監視するという不思議な光景です。

 

後に彼氏が御来店お会計のサイン。

 

 こんな辛い日もありますが…

 

その夜、言わずと知れた銀座久兵衛の寿司折K様からお土産、前例に上げた様にお客様に変な期待を持たせない為にもサッサッーーーと隠してしまう私か居ます。

 

野生動物が獲物を穴に隠す作業と似てるかもしれません。

 

寿司折とは人間を変えてしまう魔物が存在するかもしれません。

 

それでは今夜も・ひ・と・つ・お手柔らかに貴方様の御来店を心よりお待ち申し上げております。f:id:bardragonfruit2002:20180206023055j:image